「建物の調査は済んでいて、劣化の指摘もありません」
気になる中古戸建てでそう聞くと、建物の心配が一つ減ったように感じるかもしれません。
ただ、その結果を購入判断に使うには、もう一つ読みたいことがあります。
どこまで調べられたうえでの「指摘なし」なのかです。
調べた部分に劣化が見つからなかったことと、見えなかった部分の状態が分かったことは違います。今回は熊本で自分や家族が住む中古戸建てを探す方へ、インスペクションの報告書を、購入後の費用や入居時期を考える材料として読む方法を紹介します。
調査は、家全体への「合格証」ではありません
この記事で扱うのは、宅地建物取引業法上の建物状況調査です。
国の登録を受けた講習を修了した建築士が、基準に沿って行う調査を指します。
「住宅診断」などのサービス名だけで同じ調査内容とは限りません。
主な対象は建物を支える部分と雨水の浸入を防ぐ部分。目視や計測などで基礎のひび割れや雨漏りの跡など、基準に該当する劣化・不具合の有無を調べます。
壁や床をすべて取り壊して、内部を隅々まで調べるものではありません。
そのため結果は「調査時点で、調べられた範囲について得られた情報」として使います。今後の不具合がないことや、購入後に修繕費がかからないことを約束するものではありません。
参考:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」1ページ
「劣化なし」「調査できなかった」「部位がない」を分ける
報告書では、劣化の有無に加え調べられなかった部分の記載も読みます。
例えば、床下の木材が傷んでいないか知りたくても点検口がなくほかにも見られる場所がなければ、その部分の状態は分かりません。
一方、その家にもともと存在しない部位は、調査できなかった部位とは扱いが異なります。
読み分けたいのは、次の三つです。
- 劣化事象等が認められない:調査した範囲で基準に該当する劣化などが見つからなかった。
- 調査できなかった:対象はあるが調べることができず、その状態を判断できなかった。
- 該当する部位がない:その家に、その調査対象が存在しない。
様式によって記号や表現は異なるので「○だから全部安心」「空欄だから問題なし」と読み替えず、凡例と説明を合わせて読みます。
もう一つ大切なのが、一部を調査できたこととその部位の全体を見られたことも違うという点です。例えば、点検口付近から見えた床下に指摘がなくても奥の見えない範囲まで同じ状態だとは判断できません。
国土交通省の方法基準の解説でも、通常の移動で確認できる範囲などを前提とし物理的に調べられない部位と存在しない部位を区別しています。
参考:国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」4〜6ページ
概要書から、部位別の記録と写真へ進む
購入検討では、「調査の結果の概要」だけでなく、詳しい報告書を見せてもらえるか、仲介会社を通じて依頼します。
読み方は、気になる部位を一つ選び次
の順にたどると具体的になります。
最初は、対象の家と調査日です。
所在地などが検討中の家と一致するか、いつ行った調査かを読みます。
調査後に工事や被害、新しい症状があればその変化は古い報告書だけでは分かりません。
次に、部位ごとの結果と、調査できた範囲です。
床下が気になるなら「土台及び床組」などの該当項目を探します。
「無」という結果だけで止まらず、調査方法・見えた範囲・実施できなかった理由の記載へ進みます。範囲が読み取れなければ調査者に説明を求める点が具体化します。
最後に、写真と場所の対応です。
写真番号や位置図があれば、どの部屋の下・どちら側の外壁なのかを対応させます。
写真が一枚あることを、床下全体の撮影・調査が済んだ証拠にはしません。
例えば、報告書に点検口付近の写真があれば現地ではその点検口がどこにあり、気になる部屋とどう位置関係にあるかを照合できます。そこから先の見通しや調査の可否は、写真だけで推測せず調査者の説明で補います。
調査会社のジャパンホームシールドも、自社報告書の解説で項目別の調査結果にある「目視確認できた範囲」と「その範囲での劣化の有無」写真や調査できなかった理由を読む方法を示しています。ページ構成や記号は同社の例なので、手元の報告書ではその凡例に従ってください。
参考:ジャパンホームシールド「建物状況調査報告書のポイントを解説」
似た二つの家でも、次に必要なことは変わります
ここからは、読み方を説明するための架空の比較例です。
実在する販売物件や、お客様の事例ではありません。
Aの家は、床下の一部を調査でき、その範囲に劣化の指摘がない。
報告書には「点検口の位置と写真」奥に見えない範囲があることが記録されています。この場合、得られた結果を使いながら残った範囲を追加で調べる必要があるかを考えられます。
Bの家は、室内などに劣化の指摘はないものの床下は調査できていない。
点検口がなく、床下の該当項目に「調査できなかった」と記載されています。
室内の指摘がないことを床下の状態を判断する代わりにはできません。
この二つを、どちらも「調査済み・指摘なし」とだけメモすると、重要な違いが消えてしまいます。
違うのは、必ずしも家の良し悪しではなく購入前に判断材料として使える情報の範囲です。
Bの家であってもそれだけで劣化があるとはいえません。ただし追加調査の方法や実施条件が分からない段階で、床下の修繕費を「不要」と置く根拠もありません。
例えば、点検口の上にある物を移せば調査できる場合と、点検口そのものを新しく設ける必要がある場合では必要な準備が違います。後者は建物に手を加えるため売主の承諾に加え、施工の可否・費用負担・復旧方法まで整理する必要があります。
買主が内見で勝手に床を開ける話ではありません。
国土交通省のQ&Aでも点検口の有無などで調査できなかった箇所は、その旨を記録するとされています。買主が調査を行う場合には、あらかじめ売主の承諾が必要です。
参考:国土交通省「建物状況調査に関するQ&A」Q1-10・Q2-4
結果を、費用と入居時期の判断に置き換える
報告書を読んだ後は、指摘の数を比べるより自分の購入計画に何が残るかを考えます。
劣化の指摘がある場合は、どの部位のどの症状かを特定し原因や補修範囲を判断するための追加調査が必要かを整理します。そのうえで工事内容と見積もりにつなげます。
報告書のチェック一つから、工事費や緊急性まで自分で決めることはできません。
指摘はないが、気になる範囲が見えていない場合は、まず追加調査で何を明らかにできるかを考えます。「念のためもう一度」ではなく「洗面所の下の木部まで見られるか」のように、残った疑問を対象にします。
購入前には調べられない場合は、その不明点が予算や入居時期に与える影響で判断が分かれます。
例えば「引渡し後すぐ住みたい」「追加工事に回せる資金がほとんどない」という計画なら、必要な工事の範囲が分からないまま進むことは計画との相性がよくありません。調査条件が整うまで判断を保留したり別の候補へ移ったりする理由になります。
一方、入居まで時間を確保でき追加調査後の工事も検討できる方なら、不明な範囲と対応の見通しを整理して候補として検討を続ける余地があります。
ただし、予備費があることだけで状態不明の問題が解決したわけではありません。
同じ報告書でも、費用と日程にどれだけ余裕があるかによって購入判断は変わります。大切なのは「調査済みだから進む」ではなく、残った不明点を自分の計画で引き受けられるかです。
耐震性と設備まで、一緒に確認済みにしない
建物状況調査には耐震性に関する書類の確認がありますが、それをその場で建物の耐震診断まで行ったという意味にはできません。また、給排水設備などは追加調査として扱われる場合があり、建物の調査結果だけで設備の全機能が使えるとは判断できません。
「地震への備えを判断したい」「給湯器を入居初日から使いたい」なら、それぞれに対応する資料や調査結果があるかを分けて見ます。
参考:国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」5ページ・16〜17ページ、同省「建物状況調査に関するQ&A」Q2-1
引渡し時に残る設備と、その設備が使える状態かの違いは
中古戸建ての「家具・設備はどこまで残る?」の記事
でも紹介しています。
中古戸建ての報告書で持ち帰りたいのは「いつ・どこまで調べたか」「何が分かったか」「何がまだ分からないか」の三つです。
この三つがそろうと必要な追加調査と、購入後の費用・入居時期を結び付けて考えられます。
熊本で中古戸建ての購入をお考えの方は、株式会社ie’sコーポレーションへご相談ください。気になる物件とともに手元の調査報告書や入居希望時期・工事に使える予算などをお聞かせください。「調査済み」という一言で決めず、分かっていることと残った疑問を整理するところから、購入を考えていきましょう。
